鈴木さんは小田原の小高いく海が見える場所で工房を構えています。名付けて「橙(だいだい)」。なので、当初勘違いをしていて、橙を使った釉薬だと思っていましたが、そうではなく”みかん”。生まれ育った家業が、みかんの栽培をされていたのだそうです。
みかん灰釉は、名前の通りみかんの枝葉を燃やした灰を釉薬の原料にしています。灰釉は東洋の伝統的で原始的な釉薬。石の粉と灰に水を加えて混ぜます。灰には、石の粉を溶けやすくする役目があることも、伺うと楽しい。(他の灰のことを夢想・・・)
みかん灰釉は青瓷と違い、着色用に鉄分を加えないので、焼き上がりの青色は土と灰と炎が作る自然の色合い。鈴木さんのみかん灰釉の器は、この自然の色合い、青いビードロが特徴。鉄分の多い赤土などをつかえば、焼き上がりは緑色になるのだそうです。
このところ、自然のもの由来で焼成すると色が出てくる作品に、ただただ魅力を感じますが、揺り戻しというか振り戻しで、今の時代にそう技法であるかもしれません。
木灰釉は日本の伝統的な釉薬の基礎でもあり、木灰釉に銅を混ぜれば織部釉になりますし、鉄を多く混ぜれば天目釉になったりします。萩焼の白い色は藁の灰を使っています、と鈴木さんから教えていただくことはたくさん。