前回に引き続き、
鈴木さん自らが語ったお話をご紹介いたします。
勤めていた書店もご多分にもれず、厳しい状況へと追いやられる中、今こそ若い頃諦めていたものづくりに挑戦するチャンスなのかもしれないと大きな勘違いをするに至り、35歳で退職することとなりました。
その後、工房に籠り、昼夜を問わず作陶を続け、ちょうど1年後に勤めていた書店が運営するギャラリーで初個展を開催し、陶芸家としてのスタートを切ります。
無謀にも、師も無く伝も無く独学で潜り込んだ陶芸の世界ですが、個展やグループ展などの展示会を中心に活動を続け、あっという間に20年が経ちます。
焼き物は、必ず焼成という自分の手から離れる工程を通らなければ出来上がりません。偶然、自分の作為を超えた物が稀に焼けることもありますが、殆どの場合は自分の思ったようにには焼き上らずに悔しい思いを持ちます。その悔しさが次に立ち向かう原動力であり、そんな拙作を喜んでお手に取っていただける方がいることがモチベーションとなります。
学生時代にアルバイトで遺跡の発掘調査をしていたことがあります。
遺跡からは弥生時代の土器が沢山出土しました。何千年もの間、人が作った焼き物がそのままの形で残っていることに驚きました。
こんな経験からも焼き物を作る行為は、自分がこの時代に生きていたという痕跡を残したい、そんな想いのあらわれなのかもしれません。
(鈴木隆氏談)
白い作品は、生地が磁器