漆の加飾といえば、豪華な金粉銀粉などを持ちいた艶やかなイメージがあります。それが鮮やかな朱色やぬめりとした漆黒とに映え、強度のための漆ではなく、美術・アート性を発揮するそんな部分。
富を象徴する漆作品であることから、古来より加飾に用いられる動植物も縁起のよいものやおおぶりのものが多いことから、古めかしく感じるお若いかたもおおいかもしれませんね。
こちらの作品は、針描が特徴的な黒木紗世さんの「蝶花」。
蓋の部分が圧倒的迫力の錫粉に針描いたものです。蒔絵の技法の一部でもあります。
草花をのびのびと表現する作品が多くの方の心を魅了している黒木紗世さんの作品。その草花というのも、古典的な大輪の花や季節の風物詩となる植物ではなく、架空の植物たちなのだそうです。つたのように伸び広がり、花の先にも花といった描画は洋画のようでもあります。シックな黒地に金属粉ですので、クールで現代的な作風が、モダンでかっこいいという声を耳にします。
丁寧に塗りで下地をつくったあとに施す針描は見るほどに細かで、ため息ができます。蓋の裏や器の底にも、ひっそりと草花がひろがっています。ぜひご自身の目で。