陶芸のご経験がある方はご存知かもしれませんね。
作品を窯に入れて焼成する際、作品がくっついてしまわないよう焼台として、作品の下に敷く窯道具に「ハマ」と呼ばれるものがあります。地域によって呼び名も違うようですが、木戸さんの制作している金沢ではこう呼んでいるのです。
窯に入れる器の土と同じ収縮率の粘土を用いた使い捨てとなる道具。
作品と床の間にしくので「羽間:はま=はざま」という字が当てられているのだそう。もともとハマは、作品を乗せて一緒に焼くことで、高台(こうだい)の収縮率を一定に保ちながら焼き上げる事が可能になるのです。ですから、平らに仕上がり、作品作りには欠かせない縁の下の力持ちの様な存在。ただ、哀しいかなハマは一回使いきりで廃棄される運命にある、儚い道具でもありました。
木戸さんは、このハマに彼女なりの改変をくわえて、今回のBIOMEでの新作として出展してくれました。
ハマには、釉薬を掛けずに焼き締られた、九谷磁士(くたにじど)の、自然で飾らない無作為な美しさがある、と言います。磁土は、耐熱温度が高く1250℃〜1350℃まで耐えられるのです。木戸さんのハマの作品化への思いは、そのありのままの雰囲気を壊さないことを優先し、大役を果たした物たちに新しい息を吹き込むことに腐心したのです。
確かに、もったいない気持ちにの昇華の賜物かもしれませんが、BIOMEはReusesやRecycleとは根本的に違うのではないかと考えます。
木戸さんは、山本長左氏から主に絵付を学んだといいます。学びの背景には、生地を作り選び、そこに絵付をほどこし、日常にでも使っていただけるもの、文化の高位としての装飾品とすることも学んだ結果、伝統やしきたりのためではなくこの技術や文化を、自分なりの解釈や改変で表現し、人に伝え、さらに伝え続けられることを望んだはずです。
十分に永続性を考えた生産活動、芸術活動が成り立っています。
SDGsとは結果に過ぎず、彼女の活動への姿勢の表れが、
新作であるハマだと考えてください。
そして、ハマというアイテムの可能性。
今、食事を大切に、その場を豊かな時間にしようとする方には、とても良い課題となるアイテムであると、ぜっさんPRさせていただきます。