難波田龍起というアーティストをご存知でしょうか。
小野さんが影響を受けた人物として名を挙げたのが、旭川生まれの画家であり詩人の難波田でした。特に、彼の晩年の作品を観て、筆を、絵具を重ねる技法について達観するに至ったと小野さんは言います。
高村光太郎と親交をもち影響を受けた難波田は、日本抽象画の第一人者と言われながら、詩人であるとおり、作品には明確なストーリーが読んでとれると言われるアーティストなのです。
さて、小野さんの作風も、一見は抽象画。
タッチは、布地で例えれば、ツイードのよう。はたまた、正確なリズムを刻む心臓の鼓動を筆で落としたような感じ。(個人の感想)
重層的な太い点が交錯した、筆致を俯瞰して観ると、抽象画というよりしっかりとした景色が見えてくるかに感じます。
また、時折、爆発したような、破裂したような、沸き立つような赤色が全面、あるいは一部分に表される叫びの赤が小野さんの作品の中にあります。
この部分が、難波田の抽象といわれつつも。具象のごとくストーリーが読み取れそうな部分と重なってみえるように感じます。小野さんの、紅なの、赤なの、な作品をぜひ体験していただければと思います。