寺田さんはある場所を訪れました。
望月佐知子さんが運営するPRESS CLUB。
版画を刷る職人「刷り師」として約40数年、井田照一や元永定正(共に故人)ら著名な美術家を支えてきた今泉浄治氏に師事した方です。
ここでは、個人ではなかなか揃えられない版画に関わる貴重な機器が設置されています。さまざまな人たちの努力で引き継いでこられた、技術、技巧、機器を「つくる意思さえあれば」という人に向けて門戸が開かれているのだそうです。
「シルクプリントが、思う以上に手間も時間もかかることに身をもって感じ、それを知ってもらいたいことばかりに意識がいってしまっていたことに気がつきました」と寺田さん。
彼女のチャレンジは、困難なことを成し遂げることではなかったのです。
そうだった。
佐知子さんが
「版画は”自分で制御できない、
目には見えないなにものか”
との共同制作なのでおもしろい」
と仰ったのです。
そのとき、ぱーんと扉が開いたような感じがしたんです。
目にみえないなにものかと作品を作りたい!と思ったのです。
今回の「解墨」の技法は、まさに自分では
とうていコントロールできない、
というもので、そこが最大の魅力でした
(寺田マユミ談)