「自分でできることは自分で、それが生活、生きるということ」と言うアーティストを数名知っています。堂前さんもそのお一人。
函館をご訪問する前の秋。「雪が降るまでに完成するかな」とSNSで拝見していたはこだて工芸舎の中のカフェ。そのスペースは、もともとは倉庫。旧梅津商店に手を入れ始めた頃で、お庭もまだまだ成熟していないし、すこしずつご自身で手を加えていかれていた様子が紹介されていました。
雪の少なかった年の冬のはじめにカフェは完成していました。細長くて、とにかく目に当たるもの全てが、あったほうがいいもの、たのしいものなのです。どこにもない、ここだけのカフェ。「オーブンを入れようかな」と、暮らし(お店を運営し)ながら使い勝手をよくしていく堂前スタイルが見て取れます。居心地よし。
堂前さんが描く花は、懐かしい植物でも華やかなものでもなく、自生しどこにでも生え、根強く生きてゆこうとする野花たち。それがさりげなく、ふつうに咲いている様。その絵に「色」「文様」「厚さ」「フォルム」のあったらよかろうの要素が体現された器です。
同じものを数枚そろえるもよし、形が異なるものをばらばらにそろえるもよし。
不思議と、暮らすうち、使ううちになぜか家に、住人に、そして手になじんでいきますよ。日々に寄り添う器であることは間違い無し。
平日も盛況をいただいている「日めくりの器」堂前守人 陶 個展。
製作年が記されたご自身の1点をみつけてください。