想定はしていたものの、ご来廊のお客様の一言目は「まるで写真のよう」と。写実性が高いのは多分に菅野静香の画力の高さにほかならないと思います。しかし、そこだけが魅力ではないのです。
なぜその構図を選んだのか、どんなふうにこのモチーフを記録したのか。想像を膨らませると、どんどん菅野の眼、目線、視点に興味が湧くのです。
菅野は多摩川の近くで育っていて、この作品の奥に見える高速道路を走る車のライトや水の流れ、川特有の匂いを感じてきたことでしょう。
そして、絵はどうかといえば、河原の草はこんなにも精緻で風の流れまで感じさせるのに、表示板の文字がなぜこうなるのでしょう。
タイトルの面白さとあいまって、思わず見入ってしまいます。パソコン越しでみるよりも面白さを引き出すに豊富な要素を含む作品です。
なぜ解像度が低いと表現したのか、みなさんも感じ入ってください。
次にこの作品は、先の多摩川の作品の奥に走っている高速道路をモチーフにしたもの。
右端の車は、道路の端を走っているのか、っていう論争もギャラリー内で沸き起こり、みなで大盛り上がりもしました。
会期中に、少しずつ菅野静香の眼をBIOMEなりに導いてまいりますが、ぜひ原画をご覧いただけることが、菅野推しになることは間違いないと思います。
ただ、絵が上手い、きれい、なだけではないのです。