東京に出向くときは、時間を刻んでお会いするべき方との準備とその貴重な時間にどこまでの情報を得ることができるかに腐心するばかり。ホテルの部屋に戻っても、資料や画像を確認。目の前にしたときには恰も何も知らないかのようにたくさんお話をひき出すことが目的ですから。
コロナ禍もあって、この数年は大きな展覧会や素敵なギャラリー、何よりアーティストの作品を見に行くことも棚上げにしてきたのですが、先日マティス展に参りました。
美術館もさまざまな工夫を凝らし、受け身だけの展覧というのも少なくなってきましたね。
アンリ・マティス(1869-1954)「夢」ほか
マティスも絵画を始めてから最期まで自分の表現したいものが、どういう技法で適うのかを追求してきた人ですが、この作品は心の安寧が自然と柔らかな曲線と色彩に表現されたもの。解説は無粋ですので省きますが、さまざまな試みの中で、穏やかでたおやかな一面をあらわすことができた良い時間だったのであろうと感じさせます。
お目にかかっているアーティストの皆さんにも、大きく作風を転向したり試行錯誤したり、クライアントワークとして工夫をされたりとさまざまなパターンがあります。BIOMEでご紹介した作品が、そのアーティストのすべてでもなく、また完全なものでもないかもしれません。
いつも思い、彼らに伝えるのは、今のこの時代、あなたのおかれた環境、やりたいことをぜひみせてください、あるいはそれをキーにしてください、と。
人生には、晴れの日も雨の日もあるわけで今そこで見ることができるのは、そのときだけのアーティストの一端でしかありません。そんなことにも思いを馳せながら、ギャラリーでもお愉しみいただければとおもったのでした。