おわりとはじまり。はじまりとおわり。後者のほうが、なんだか一話完結のような気がします。
「おわり」と「はじまり」。この二つの言葉、しばしば対義的に語られますが、このテーマを選んだのは、その間に横たわる曖昧な「隙(きわ)」にこそ、人間の嗜みや活力の本質が隠れているんじゃないかと考えたからです。
終わりが来たからこそ何かが始まる、という考えは自然に思えるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか?
「おわり」が明確に証明されなくても、新しい何かが知らぬ間に始まっている事もあります。それは時間の流れや環境、そして私たち自身の内に育まれた変化が次の歩みを生む力を持っているからではないでしょうか。
その境界は一体何でできているのか?
何がどうなった時に「おわった」と言えるのか。
そしてなぜ、その瞬間に「はじまり」が生まれるのか。
終わりがどのように訪れようと、新しいはじまりを作り出すのは自分自身であって、誰にも止められない、そんなものであってほしいなという思いです。
版画は、自ら筆を動かして描く技法ではなく、彫刻刀で彫る、製版には科学反応を用いるなど、ひと手間を要するのです。この技法を選択し、そのひと手間に翻弄されてもなお表現し続ける版画。2024年は、多くの版画をご紹介しましたが、これまでとは大きく理解が深まったのは事実です。
中村美穂さん、片平菜摘子さん、そして宮崎文子さん。BIOMEのテーマにご協力、そしてすばらしい作品を寄せていただけたことを心より感謝いたします。